市町村制覇記

自転車で日本の全市町村を制覇する過程を記録するブログ

前史

 私は幼い頃から地図を眺めるのが大好きだった。特に市町村の位置や形を見るのが大好きで、いつの間にか市町村の名前を覚えてしまうほどだった。そのうち、様々な市町村に訪れてみたいと思うようになった。しかし、お小遣いをあまりもらえない私の懐事情は基本的に悪く、気軽に電車やバスで旅することはできない状況だった。そこで、自転車を用いることにした。始めはなんの変哲もないママチャリに乗って、隣町に行った。それが中学生の時である。私は小学生から高校生の頃まで福知山市というところに住んでいた。福知山市京都府北部に存在する人口6万人ほどの市で、高校野球の強豪福知山成美高校や、福知山線脱線事故(事故発生箇所は福知山市内ではなく、兵庫県内だが)でその単語を耳にしたことがある人はいるかもしれない。福知山市とその周辺市町村の位置関係は以下の地図の通りである。

 私は最初に福知山市の東隣に位置する、綾部市の市境を目指した。福知山と綾部は共に福知山盆地に存在し、両市の間の道はほぼ平坦であった。私の住居から綾部市境まではおおよそ7 kmほどであったが、それでも着いた時には抑えきれぬ達成感があった。以降、私は自転車に乗って隣接市町村に行くことにはまった。綾部市街地、丹波市舞鶴市京丹波町宮津市朝来市与謝野町篠山市(現丹波篠山市)と、福知山市の近隣市町村に次々と自転車で到達することに成功した。その中には峠を越える必要がある目的地も存在し、体力を使い切ることもあった。初めて越えたのは丹波市境に存在する塩津峠で、標高96 mの小さな峠であったが、頂上に着いた時にはへとへとであった。ただ、やはり登り切った時の達成感は凄まじかった。私が福知山市にいた時は日帰りの自転車旅オンリーだったこともあり、福知山から50 km以内に存在する(すなわち往復100 kmの位置に存在する)市町村のみしか行けなかった。最も遠くに行ったのが、舞鶴市福井県高浜町の境であり、家から約46 kmであった。

 

 やがて私は大学進学を機に東京都に引っ越し、一人暮らしを始めた。初めの1年余りは相変わらずママチャリに乗って近隣の地を訪れた。そしてついに大学2年生の春に渋谷でスポーツ用の自転車であるクロスバイクを買った。クロスバイクに乗った瞬間、私の全身を驚きと感動が包んだ。ママチャリとは段違いにペダルが軽く、かつ速かったのである。さらに、今まで息を切らしながら登っていた渋谷の坂をいとも容易く踏破した。私はこのクロスバイクに乗って、ゴールデンウイークに初めての泊まりがけの旅を試みた。目的地は箱根だった。一日目で東京から小田原までの70kmを走破し、ネットカフェに泊まった。二日目は箱根湯本駅まで登って引き返し、国道246号の連続坂道に辟易しながら無事家に帰ることができた。この折になって私にある欲求が生まれた。

 

 「日本全国の市町村を自転車で制覇したい」

 

 こうして私は新たなる目標に向けて動き出した。

 これから語るのは、未だ道半ばであるこの目標の達成に向けて、私が自転車を走らせた日々である。制覇した市町村のカントリーサインや市街地、道中の風景の写真とともに語っていきたいと思う。